[補足資料・日本語訳]
OECDのScopus採用に関する補足情報:インタビュー抜粋
(OECD 科学技術産業局 経済統計分析課 主席行政官 富澤宏之氏コメント)
- Scopusを採用した理由
以下の三点があげられる:
- 機能が優れていること。従来のデータベースでは不可能な著者と所属機関の大規模なリンクや、著者や機関にIDを割り振っている点など、統計分析をする上で魅力的なデータである。
- カバー範囲が広いこと。OECDは国際機関であり、科学技術分野において米国の存在感は圧倒的ではあるが、データソースが一国に偏ることは避けるべきである。よって欧州やその他の地域にも強いScopusの広範なコンテンツを使ったほうが説得力のある分析ができると期待している。最近は加盟30カ国だけでなく非加盟国の影響力も大きい。中国やブラジルは現時点で加盟国ではないが、これらの国が抜けている分析データでは価値が下がってしまう。世界全体を見る必要がある。
- 新しいデータベースであること。新しいデータを利用して早く結果を出したいと思っている。
昔に比べ、研究内容が戦略的になっている。国の社会問題や環境問題などが複雑に絡み、政策も変化してきている。一方、科学発展の研究というのは予測がしにくく、わからないことが多い。Scopusのようなデータベースの飛躍的な進歩により、従来できない分析が可能になってきた。今後は特許と論文の関係を分析したり、科学を地図のように俯瞰したりすることにより、研究とイノベーションの関係を調べることも重要になってくる。
- OECDにおけるScopusの役割と用途
研究活動の評価ツールとして期待している。各国の経済発展を考える上で、科学技術は重要な位置を占めていると考える。加盟国で共通認識を作るにあたり、OECDはその基盤となるデータを提供している。ある国の研究活動を定量的に見るという点では、従来はその国のインプット、つまり研究者の人数や研究費といった指標が使われてきた。しかし重要なのはアウトプットであり、従来にはなかった論文数や引用数なども考慮しなければならない。
Scopusの用途は以下の三点:
- 世界の研究動向を把握すること。現在、どういう分野が盛んに研究されているのか。
- 国別の状況を把握すること。通常、それぞれの国では国内の活動状況は把握できるが、単独で数字を追っても政策ができるわけではない。他国と比較して初めて方針が出せるということもある。たとえば英米はライフサイエンスが強いとか、日本はエンジニアリングが強い、など。
- 国境を越えた研究(共著)について把握すること。各国で人材獲得競争が激化している。海外から人材を確保する政策などの効果をビブリオメトリックス(計量書誌学)で得ることができるかもしれないし、分析方法によっては国を超えた人材の移動も把握できるかもしれない。
- OECDが提供する、Scopusを使った解析データの利用者像
各国の政府が主たる利用者で、方針や政策を決定するために利用する。通常、政府は自国のデータは集めても他国のデータまでは詳細に収集していない。方針などを決める上では国際比較をして初めて意味がある。OECDの役割の一つとして、加盟国からデータを集め、これを比較可能なように全体を調整するようなことも行う。
利用者像は四つのグループに分かれる:
- 政策決定機関。日本では科学技術基本計画を出しており(第2期2001年〜、第3期2006年〜)、重点分野として材料科学やナノテクなどが挙げられた。
- 各国の助成団体。他国の資金配分状況などを参考にする。
- 政府や民間の研究機関。研究現場を管理している機関が、どのような研究をすべきかを検討する。
- 科学技術やイノベーションそのものを研究しているグループ。経済に与える影響などを研究している。
(2008年9月実施)